私の幼馴染みは小さい頃から魔法みたいなものが使えるみたいで、よく私が怪我をした時や花を育ててる最中に枯らしてしまって泣きつくと、治してくれていた。そんな関係は今もかわらなくて、今日も仗助に泣きつきにいくと、「またかよ〜、今度はなんだァ?」なんて言いながらも一緒に家まできてくれた。仗助をつれて裏庭にまわると、母さんがつくりあげた家庭菜園スペースの一角に枯れてしまった苗が埋まっていた。

「これです」
「なんだこれ?」
「苺」
「苺ォ?なんでまた苺なんて育ててんだよ」
「ジャム作ろうかなって思って」
「ジャムねェ」

とかなんとかぶつぶつ言いながら仗助は枯れてしまった苺の苗の前にかがんだ。私も一緒にかがむ。仗助が枯れた苗に手をかざすと少しずつ元にもどっていく苺。なんかい見ても不思議な感覚だ、巻き戻しされているような感じ。あーあ、仗助は何育てても枯らしてしまうこんな私のことをどう思ってるんだろう。そう思うと気づいたらため息がでていた。

「はあ・・・」
「どうした?」
「私、なに育ててもダメだなあって思って・・・」
「そうかァ??」
「そうだよ、お花もまともに育てられないんじゃあ子供も育てらんないよね・・・」
「花と子供は違うと思うぜ?」
「こんなんじゃいいお母さんになれないよォ、仗助のほうがいいお母さんだよ」
「俺はお母さんにはなんねーよ」

苦笑いしている仗助をじっと見ていると「ほら、治ったぜ?」と言いながら苺の苗を指さす。私はいつになったらお花をまともに育てることができるんだろうか。いままで仗助の力を借りずに育て上げたことがないんだけども。

「ありがと仗助」
「お礼はジャムでいいからな〜ッ!」
「う〜ん」
「どうしたんだよ、いつもならスゲー喜んでんのによォ」
「私仗助がいないと全然ダメだね・・・」
「は・・・」

仗助の力を借りないと何もできないなんてそんなのダメ、嫌すぎる!次育てるお花は絶対自分の力で育てきってみせる!と意気込んでいたら一瞬固まっていた仗助がいきなり立ち上がった。

〜ッ!お前ッ・・・!!」
「え?なに?どうしたの急に」
「(それはこっちの台詞だろうがよォ〜!!!)」

そして今度は黙り込んで何故か顔を赤くする仗助。あれもしかして怒ってる!?そうだよねいつまでも俺に頼ってんじゃねえよってそう思ってるんだよね!

「ごめんね仗助!はやく仗助に助けてもらわなくても育てられるようになるから!」
「じゃなくてー!」
「えー!?なに!?なに怒ってんの!?」
「ちげえよ!」

怒ってないの!?えー!じゃあなんなの?

「別に枯れちゃってもいいだろうがよ〜、俺が治すんだから」
「でも仗助に迷惑かけてばっかじゃ・・・」
「俺は迷惑とか思ってないからいいんだよ」
「そうなのォ?」
「そうなの」

ようやく落ち着いたのか、仗助は私の隣にまたかがんだ。仗助はまだ顔を少し赤くしたまま私のことをじっと見ている。

「もしが怪我したら絶対俺が治す」
「ホントに?」
「んでもしの子供が怪我したら絶対俺が治す」
「えッ、それってどういうこと」
「えッ!?」
「えッ!?」

お互いになぜか顔を真っ赤にして「え?」「え?」を繰り返していると、仗助が私から視線をそらして苺の苗を見た。

「だからよォ、まだしばらくは俺に頼れって言ってんだよ〜」
「あ、うん・・・そういうことか・・・」
「おう・・・」
「えッ、いいの??」
「いいって」
「うん」

今まで仗助とのこの関係がいつ終わってしまうのかなんていう心配はしたことがなかったし、そんな想像したこともなかった。けど、いつまで続くのかなんていう想像もしたことなかった。ずっと近くにいるのが当たり前だったから。私は、今日、今、はじめて側に仗助がいなくなる可能性もあるっていうことを考えた。

「やっぱり私仗助がいないとダメだから、ちゃんと近くにいてね」

苺の白い花をいじりながらぼそっと呟くと、仗助の小さい「おう」っていう返事が聞こえた。




裏庭の苺




仗助と純愛したいです。(130303)